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現時点で癌検診に利用できる最も有効な技術は超音波画像ですが、従来の超音波診断の他に検診に用いられる技術として以下のものがあります。
- 超音波画像診断
- X線検査
- MRI
- Computertomography
- PET検査
- 血液検査
超音波画像診断
超音波は超音波検査とも呼ばれ、人間には聞こえない高周波の音波を組織や内臓に反射させる技術です。発生したエコーから、ソノグラムとして知られる写真が生成されます。この画像化方式は一般に固形腫瘍と嚢胞とを区別するために使用されます。超音波は、他の方法では確認が難しいしこりの検査にも使用されています。
超音波は、癌を疑う理由がある場合に針生検(ラボで分析するために針で癌組織または体液を除去する)などの他の診断手順の一部としても使用できます。
超音波は癌の非常に早期の徴候を検出するのには適していませんが、5歳から1年に2回、定期的な超音波スクリーニングが推奨されます。
胸の超音波検査の費用:250~500スイスフラン
(情報源:Animal Oncology and Imaging Center, Hünenberg, Switzerland)
血液分析
ヘモグラム(白血球、赤血球、血小板)と生化学分析(肝臓、腎臓酵素、タンパク質、ブドウ糖、電解質)からなる血液分析はすべての癌患者に推奨されます。それに加えてしばしば尿分析も必要になります。これらの検査は癌診断に特化したものではありませんが、確定診断に貢献します。腫瘍はしばしば血液に二次的な影響を及ぼします。具体的な例として、貧血、血小板数の減少、肝臓や腎臓の酵素の上昇、電解質の不均衡の誘発が挙げられます。犬には主要以外にも他の病気がある可能性があり、そのことも徹底的な初期スクリーニングを行う理由です。
分析の費用:約80スイスフラン
(情報源:Animal Oncology and Imaging Center, Hünenberg, Switzerland)
胸部レントゲン(X線)
従来のX線とコンピュータ画像を使用するデジタルX線があります。X線撮影の主な目的は、基本的な組織構造の存在を写真に記録することです。病気に伴う機能変化を確認するために行う場合もあります。胸部(胸郭)のX線撮影は安価で、覚醒状態の動物に対して、麻酔を使わずにすばやく行うことができます。ただし、より高価で、より高い技術を必要とし、全身麻酔下で行われるCT(コンピュータ断層撮影法)と比較すると、肺転移の可視化の信頼性に劣ります。またいずれの技術でも、肉芽腫のような良性病変を悪性転移性増殖と区別するのは困難です。絶対診断には生検が不可欠です。
X線検査の費用:約200スイスフラン
(情報源:Animal Oncology and Imaging Center, Hünenberg, Switzerland)
CT(コンピュータ断層撮影法)
CTは、病期(腫瘍の大きさの評価)を分類したり、将来の治療法に対して起き得る反応を評価したりするための主要な診断ツールです。X線管と検出器を用いてCTを実施し、患者の組織構造の平面状またはらせん状の「スライス」を生成します。得られた情報をコンピュータで再構成し、何百の画像を生成します。これをさらに再構成して三次元(3D)画像を作ることができます。これらは腫瘍の手術や放射線療法の計画に非常に役立ちます。CTを使用すると、患者の肺転移を1分以内で評価できます。この方法では、犬を麻酔で動かなくさせる必要があります。静脈内に注射する造影剤の使用によって、CTの詳細度をさらに高めることができます。またCTでは、鼻腔、頭蓋骨、顎、骨盤および椎骨の画像化に関して通常のX線よりも優れた結果が得られます。さらに、リンパ節、特に頭頸部領域のリンパ節をよりよく視覚化して転移性疾患の評価を行うことができます。CTはまた、肺転移のスクリーニングに関してX線撮影法よりも優れています。
費用:約1,000スイスフラン
(情報源:Animal Oncology and Imaging Center, Hünenberg, Switzerland)
MRI(磁気共鳴映像法)
MRIは、磁石を使用して体内の領域の詳細な写真を作成するものです。このイメージング方式では放射線を使用しません。内臓のMRIでは、患者を走査テーブルに載せます。そしてそのテーブルを磁石の入ったチューブ状の機械の中へ移動させます。それから最初の一連の写真を撮影した後、場合によっては、腫瘍の視認性を高めるために患者に造影剤を注射します。セッション全体で約1時間かかるため、犬に全身麻酔を施す必要があります。MRIは、特に中枢神経系(脳および神経)を含む軟組織構造に関する情報を得るための手段として優れています。
スクリーニングの費用:約1,500スイスフラン
(情報源:Animal Oncology and Imaging Center, Hünenberg, Switzerland)
PETスキャン(ポジトロン(陽電子)放出断層撮影法)
PET(ポジトロン(陽電子)放出断層撮影法)スキャンは、人間の組織で起こる化学変化をコンピュータで画像化したものです。患者はブドウ糖に似た放射性薬剤の注射を受けます。癌細胞は体内の他の組織よりも早く糖を吸収するため、この放射性の糖は、腫瘍の位置を特定するのに役立ちます。放射性物質が注入された後も、患者はテーブルに横になってじっとしています。患者は45分間にわたってPETスキャナを6から7回通過します。これは、薬剤が体内を循環するための時間で、そして腫瘍が存在する場合は糖がその中に蓄積します。PETスキャンは、小さいかあまり攻撃的でないものを見つけるよりも、大きいか攻撃的な腫瘍を検出することにおいてより正確です。
PETスキャンは、人間の腫瘍患者では広く用いられていますが、ペットに利用できることはほとんどありません。
こうした状況は近い将来に確実に変わるでしょう。